サピエンスの未来

2021年08月13日 08:57

先日、本年4月30日に立花隆さんがお亡くなりになったニュースを見ました。立花隆さんといえば、ジャーナリストであり、ノンフィクション作家であり、評論家でもあり、多岐にわたる執筆テーマで数多くの著書を執筆している「知の巨人」のニックネームでも知られている方です。私も「宇宙からの帰還」「脳死」「臨死体験」などは読ませていただきました。今回読んでみた本は「「サピエンスの未来」という東大教養学部で1996年に行った講義を元にしている月間「新潮」に連載された「東大講義 人間の現在」第13回〜24回までを一冊のまとめたものです。内容を説明するのはかなり難しいのですが、フランスのカトリック司祭で、古生物学者・地質学者であるピエール・テイヤール・ド・シャルダンのキリスト教的進化論を紐解く形で、進化史の中での人間を位置づけ、未来の姿を考察すると言ったところでしょうか。精神圏ですとか、超・進化ですとか、超・人間など興味深いキーワードも登場します。中でもなるほどなあと思った部分は、テイヤール・ド・シャルダンが著作の中で語っていた“人間の最も大切な能力である見ること”について解説しているところでした。
『人間のこれからを考えるためには、人間はもっと見る能力を高める必要がある。眼に入ってくる映像をただ受動的に受け止めるだけでなく、それをどう受け止めれば正くものをみたことになるのか、我々もこれからもっとより良く見る力を身につけるために、新しい感覚を養う必要がある。』
それのは養うべき7つの感覚があるのですが、
①広大さと微小の中に感ずる空間の無限さの感覚。
②深さに対する感覚
③数に対する感覚
④比率の感覚
⑤質の感覚
⑥運動に対する感覚
⑦相互の関連に対する感覚
特に④比率の感覚に関して詳しく解説されていて、これは種々様々の多きさとリズムによって、無限な広がりと微細なものとを区別し、また星雲と原子とを区別している縮尺の差をどうにかこうにか実感しうる感覚。そういう感覚を身につけるためには、指数関数的に物事をとらえよと説いています。なるほどなあと思ったのですが、ここの文の中の「リズム」と言う部分に引っかかっていて、もちろん比率の問題なので指数関数的な捉え方の問題になつと思うのですが、なぜわざわざ「リズム」と言う文章を入れたのだろうか?フランス語が読めませんので原文がどうなっているのかわかりませんが、リズムというと数列的な感じがするのは面白く感じます。他の感覚についても解説されており、多面的なものの見方を獲得するためのコツのようなものを示唆してくれます。
我々はどこからきてどこに行こうとしているのか・・・・・1998年から1999年に書かれた文章ですが、今読んでも20年以上の時間を感じさせません。・・・・・・・おすすめの本です

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