身体構造力

2021年06月25日 08:53

今回は「身体構造力」という本です。これは伊東鍼灸整骨院院長・龍水気功道場師範で柔道整復師の伊東義晃先生が書かれたものです。今まで柔道整復師の先生が書かれた本は読んだことがなかったので、日本人のからだと思考の関係論という副題に惹かれて読んでみました。現代の医療の枠組みでは身体構造、とりわけ骨格と筋肉の構造があまりにも軽視されているとして、具体的な例を挙げながらその「構造の力」を明らかにしていき、十分に活かせない状態は、本来ならば必要のない筋肉の緊張や拘縮を呼び、様々な愁訴を引き起こす原因となっていることを解説しています。また身体の構造ばかりではなく、私たちの世界観との関わり、思想や文化など様々な視点で幅広く医療の忘れがちな当たり前のことについて考察されています。もともと大学院で哲学、美学、文芸思想などを研究されていた方なので、構造を理解し整えることは真の哲学的な表現たりうるのであるとも語っています。

中でも印象に残った部分は、治療家の苦悩と孤独と疲労感という項目で、人間の歪みや心も身体も千差万別です。複雑な要素が絡み合い、その絡み合いの強度も全然違います。自分の手法の限界や壁にぶつかります。“見立ては正しいはずなのに”どうしても治らないのです。そんな時の治療家は孤独です。否応もなく、己の無力さ、己の卑小さ、矮小さを感じざるを得ません。そうゆう状態に陥った時、人というのは不可知なものに逃れようとします。「身体から逃避してしまう治療家」というのは冗談みたいな話ですが、たくさんいるのです。(一部抜粋)これは治療家にはキツイ一言ではありますが、きちんと受け止めなければならないと感じました。

あまり一般向けではないと思いますが、治療家がどんなことを考えているのかが良くわかる一冊だと思います、興味のある方は是非読んでみてください。

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