操作される現実

2021年05月28日 08:37

「操作される現実」(The Reality Game サミュエル・ウーリー著)という本を読みました。著者のサミュエル・ウーリー博士はAIや政治、ソーシャルメディアを専門とする研究者兼著述家。テキサス大学オースティン校のジャーナリズム・スクール助教及びメディア・エンゲージメント・センターのプログラムディレクターを務め、オックスフォード大学オックスフォード・インターネット研究所のコンピューター・プロパガンダ・プロジェクトを共同で主催し、政治的操作のテクノロジーについて様々なメディアに寄稿している。

この本の中でサミュエル博士は、すでに現実となっている「フェイクニュース」や「トロール」「ボット」などの民主主義を蝕むデジタル時代の現象から、さらにその先にあるVR(仮想現実)、AI(人工知能)といった先進のテクノロジーのプロパガンダへの利用によって、仮想空間での思想教育、リアルな偽の映像・音声による世論操作がなされ、私たちが真実を把握することが難しくなっていることを指摘し、こうした感覚をハックするテクノロジーがもたらす問題を分析しています。

すごい時代になってしまっているようです。あまりに情報が溢れ返っているので、その中から正しく必要な情報を選び出すのは至難の技となってきています。博士はいろいろな情報を作り出す手法として、2016年トランプ前大統領の選挙コンサルティング会社であったケンブリッジアナリティカについて“インターネットを構成する大量のデータを、科学的知識の中心をなす他の重要な要素、すなわちデータに対する経験主義、反証可能性、及び再現性については考慮しようとしなかった。要するに、彼らは「データ」を使って、デタラメの話に信憑性の幻想を纏わせたのである。”などや“ブレクジットをめぐる議論中にツイッターボットがEU離脱支持のメッセージを拡散するために、多くの政治ボットが使われていて、自動アカウントの大部分は非常に単純で、他人が投稿したコンテンツをリツイートしたり、単なるノイズを生成したりしていた。”などの現実に起こっていた問題の具体例をあげてわかりやすく解説してくれています。

最後の結論では、さらに今後起こりうるであろう操作される現実について考察し、『私たちは自分たちを支配するために使われているのと同じテクノロジーを使って、その支配に対抗することができる。』と博士が書かれているのは少し安心させられます。社会は民主主義を中心に回るべきであると主張するためにはどうすべきか?考えさせられた内容でした。

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