「古(いにしえ)の武術に学ぶ無意識の力」という本を読みました。この本は慶應大学大学院システムデザイン・マネジメント科教授(ウェルビーイングリサーチセンター長)の前野隆司博士が武術研究家である甲野善紀さんにインタビューする形で進められていて、古の武術に内包する“運命は完璧に決まっていて、同時に完璧に自由である”という矛盾したものを飲み込んでしまうような矛盾包含型世界観から、広大な潜在能力を秘めている無意識の力を考察しています。
前野隆司博士は意識という問題に対して、わたし(意識の主体)を運営し、その振る舞いを決定しているのは、わたしの中で様々なタスクを反射的に行なっている機能の集積であるという「受動意識仮説」を提唱している方です。自由意志は100%ないが、意識下ではそのように感じているだけであると言ってもいいと思います。
甲野善紀さんは人間にとって自然は何かを研究するために武の道に入り、「松聾館道場」を設立。以来剣術、抜刀術、杖術、薙刀術、体術などを研究し、その技と術理がスポーツに応用されて、その後楽器演奏や介護、ロボット工学などの分野からも関心を持たれています。野球の桑田真澄さんや卓球の平野早矢香さんを指導していたそうです。
甲野さんは「我ならざる我」つまり自分ではない、もう一人の自分が剣を振るっている。そうゆう世界を追求していった結果「自由であり、不自由でもある」という納得しずらい矛盾の問題に行き着き、それを納得してそのまま飲み込む事ができれば、自分の生き方が貫けるのだとして「人の運命が決まっていようが、決まってなかろうが、別にどっちでもいい。自分としては、ただやるだけ」と言っています。
本の中では「禅」の事も数多く触れていますが、禅と武術の考え方はかなり近いものがあるのでしょうか、鎌倉幕府が公家文化に対抗心を抱き禅宗を教学として保護していた事も関係しているのかもしれません。
脳科学好きにはおすすめの本だと思います、興味のある方は是非読んでみてください。