『急がば回れ』という言葉があれば『先手必勝』という言葉があり、『器用貧乏』という言葉があれば『専門バカ』なんていう言葉もあります。大体ことわざや四字熟語は一方の意見を表しているものがあればがあれば、それに反するものも存在してバランスを取っているように思えます。最近の世の中は専門化がどんどん進み、どういう仕組みで物事が動いているのか分かりづらくなってきていますが、早期に専門に特化することがうまく現代を生き抜くコツだとする考え方に、一石を投じている本を読みました。「RANGE知識の幅が最強の武器になる」はアメリカの科学ジャーナリストであるデイビッド・エプスタインさんが書いた本です。この本の中で“私たち全員が直面する課題は、専門特化がますます推奨され、要求されることさえある世界で、早熟さや、明確な目的意識が求められる場面は確かにある、しかし幅広く始めて、成長する中で様々な経験をしてゆくことで、どうやって多様な視点「レンジ・幅」を持ち、分野横断的な思考を維持していくのか?ということである”と書いています。例えばロジャー・フェデラーはボールを使う競技だったらなんでもやってみたいというような少年で、幅広くスポーツを経験しており、13歳の頃になって次第にテニスに惹かれていきます。また20世紀で最も優れたピアニストの一人と言われているスヴャトスラフ・リヒテルが、初めて正式なレッスンを受けたのは22歳の時だった。スティーブン・ナッシュはバスケットボールを始めたのは13歳の時だったが、NBAのMVPを2回獲得している。などから早期に専門化をせずに成功した例をあげています。さらにまたアメリカの政府組織IARPA(情報先端研究局)の「EU加盟国のうち一ヶ国が、この日までにEUを脱退する可能性はどれくらいか」等の予測を競い合う研究では、一般から集めたボランティアチームが、機密データにアクセスできる経験豊かな機密情報アナリストチームに圧勝している。などから多様な視点(レンジ)を持つことの重要性の例を挙げています。
ここでは書ききれませんが、ほかにも数々の実例を挙げながら、知識のレンジを持つことの重要性を丁寧に分かりやすく解説してくれます。ぜひ読んでもらいたいおすすめの一冊です。