「地形と日本人 私たちはどこに暮らしてきたか」京都大学名誉教授 金田章裕博士著絵を読みました。近年頻発する自然災害は、単に地球温暖化や異常気象だけでは説明できない。防災・減災の観点からも、日本人の土地との付き合い方に学ぶ必要がある。歴史地理学の観点から具体的な地形の例を、エピソードを交えて紹介しています。金田博士の専門は歴史地理学で、古来日本人は自然災害といかにして戦って工夫してきたか、現在なぜこのような地形になっているのかなどを「空間的、時間的」両方の側面からうまく解説してくれます。歴史地理学という分野はあまり馴染みが無い分野だったのですが、本書の中で博士が第1章で触れており、地理と歴史の二つの分野はかつて多くに共通性を持っており、東西の古典的な書物(中国の漢書や後漢書、日本の日本書紀と風土記、古代ギリシャのヘロドトスの書いた歴史など)の「地理」と「歴史」が含む内容には、多くの隔たりはなかったと見る。しかしカントが地理学を「空間的並存」の状態を記述する学問、歴史学を「時間的継起」の様相を区述する学問と定義してから近代以降の、研究対象の違いはこの分類に端を発し、現在も基本は変わっていないが、異なった空間に並存しながらも、時間の経過によって、相互に異なった状況を呈する現象を説明するためには、地理と歴史の記述の重層を想起させる歴史地理学の観点を必要とするとしています。“時間と空間は表裏一体なので物事を分析するときには同時に(重層的に)考察する必要がある。”・・・そう考えてみるとどちらか一方の視点で考えると、どちらかの視点が疎かになることはよくあるので、多角的な視点について考えさせられます。
ちなみに本の中では地名についても触れている部分があり、桓武天皇が平安京を遷都してから長く「京」が通称だったが、鎌倉幕府は「京都」と表現することが多く吾妻鏡にこの表現が見られるなど地名の変遷などの話も興味深いです。興味のある方はぜひ読んでみてください。