「歴史の教訓 失敗の本質と国家戦略」は内閣官房副長官補と国家安全保障局次長を兼務されていて2019年に退官された、兼原信克さんによって昨年出版された本です。国家安全保障局は日本の国家安全保障に関する外交・防衛政策の基本方針・重要事項に関する企画立案・総合調整するところなのでまさに国家戦略の中枢にいた方ではないかと思います。“「統帥権の独立」が政争の具として登場し、軍部の暴走に繋がったために、シビリアンコントロールが効かなくなってしまったことは、日本憲政史上最大の失敗であった” など近代日本の歴史を独自の視点で振り返り、さらにこれからの国家戦略構想についても提言されています。元官僚の方が書いた本なのでレポートとか論文のような内容かと思っていたのですが、第1章は “歴史とは何か”から始まり、第6章では哲学的であったりや宗教的な側面から普遍的価値観についても考察しています。国家戦略を考える上では、こうしたブレない中心に据える視点のようなものがしっかりないとダメなのだろうなと考えさせられました。
一番印象に残った部分を一部抜粋します“21世紀に生きる私たちは、昭和前期の日本はどうしてあそこまで性急だったのか、どうしてもう少し待って様子を見ることが出来なかったのかということを、突き詰めて考える必要がある。政策的な過ちなのか、道徳的な過ちなのか。戦略的な過ちなのか、戦術的な過ちなのか。軍事的な過ちなのか、外交的な過ちなのか。それとも日本の統治機構に根本的な制度的欠陥があったのか。
さらにこう書いています“何をどう間違えたのかを分析し、今の安全保障政策や制度に生かすことができなければ、本当に反省したとは言えない”
国家戦略を担っていた方の言葉だけに、重く受け止めなければならないと感じました。