徐々に空気が乾燥してくる季節になってきました。歳のせいでしょうか、乾燥で足の脛が痒くなることがあります。すでに乾燥肌対策として数週間前から保湿クリームを塗るように心がけています。実験医学2020Vol38 No3をみていたら(特集は痛みについてでしたが)痒みについてのコラムが載っていたので紹介したいと思います。そのコラムには九州大学の津田誠博士の研究よって、グリア細胞のアストロサイトは慢性的な「痒み」に重要な働きをしているのではないかと書かれています。例えばアトピー性皮膚炎などによる慢性的な痒みは、過剰な引っ掻き行動を起こし、皮膚炎をさらに悪化させ、さらなる痒みを生むという悪循環の原因になるため、適切なコントロールが必要となります(アトピー性皮膚炎に限らず引っ掻くのは良くない)。博士らはアトピー性皮膚炎モデルマウスなどを用いた研究から、このモデルマウスの脊髄後角でアストロサイトが活性化し、それを制御することでモデルマウスが呈する慢性的な引っ掻き行動を抑制できることを見出したそうです。つまり、脊髄後角のアストロサイトは、痒みの慢性化において重要な細胞であることがわかってきました。今後、それぞれの病態プロセスにおいて、アストロサイトの活性化にどのような違いがあり、痛みとかゆみの感覚信号を伝達する神経サブセットそれぞれに、アストロサイトがどのように作用しているかなど研究が進めば、痒みに対する新薬の開発などにもつながる可能性があるのではないかと期待しています。
ちなみにアストロサイトとはグリア細胞の一種で、脳や脊髄において神経繊維の支持や物質輸送を介して周辺の様々な条件を調節する機能も有している。(シナプスにおける神経伝達物質調節の研究なども近年では盛んに行われている)