日本人ほど日本人論が好きな国民はいないそうです。確かにニュースを見ても海外の反応といったニュースが伝えられているのをよく耳にしますし、コロナ関連のニュースなどは、日本の対策が海外からどういった評価をされているか気になって、自分自身も関心を持って見ていたように思います。しかし“日本人にはこういった傾向がある”というためには、多角的に比較できる視点を持った意見を参考にすることが重要なのではないかと思い、「ハーバードの日本人論」佐藤智恵著を読んでみました。日本を題材にした研究や授業をしている教授陣に対するインタビュー計10講義分が掲載されています。メディア論、美術史、分子細胞生物学、宗教学、日本文学など多岐にわたる話の中で、ユキオ・リピット教授(美術史)の伊藤若冲に関する話や、ジェームス・ロブソン教授(美術史)の欧米人と日本人の「宗教」の定義が違う話や、デイヴィッド・C・アサートン助教授(日本文学)の平家物語に登場するサムライのイメージが変わる話などは興味深く読ませてもらいました・・面白かったです。佐藤智恵さんも書いていますが、グローバル化とは決してカタカナ言葉やローマ字をたくさん使ったり、西洋かぶれになったりすることではなく、日本や日本人のことをどれだけ深く理解しているかである。もちろん深く理解するためには日本人が、日本や日本人のことをどれだけ客観的な視点を持てるかに掛かっているのだと考えさせられます。
最後に日本にとって8月6日、9日は(8月15日もですが)忘れてはならない日ですが、カレン・L・ソーンバー教授(日本文学)の話が印象的だったので一部抜粋します。【ほとんどの学生はホロコーストや「アンネの日記」については知っていても、原爆投下に関しては高校の歴史の授業で少し教わった程度です。被害者の立場で書かれた物語など、読んだことすらありませんから、原爆投下が個人の人生や地域全体にどんな影響をもたらしたか、想像もつかないのです。だからこそ文学が大きな力を持ちます。】・・・・・核廃絶や平和について考えてみたいと思います。