「新らしい経済のつくり方:『人間中心』の日本型資本主義へ」D・ヒュー・ウィッタカー著を読みました。著者のD・ヒュー・ウィッタカー博士は、オックスフォード大学日産現代日本研究所教授、同大学セント・アントニーズ・カレッジフェロー。1983年に国際基督教で学士号、1988年にインペリアル・カレッジ・ロンドンで産業社会学の博士号を取得。ハーバード大学でのポスドク研究の後、ケンブリッジ大学(英国)、同志社大学(京都)、オークランド大学(ニュージーランド)で教鞭をとり、現職。日本経済および比較経済学をテーマとした著書は、「日本経済における小規模企業」、「新しいコミュニティ企業:雇用、ガバナンス、経営改革」、「成功からの復活:日本におけるイノベーションとテクノロジーの経営」、「比較起業家精神」、「資本主義の改革、デジタル化とグリーン化:日本のアプローチ」など多数。日本在住歴は通算15年。(表紙裏著者紹介より)
この本は、日本が2015年以降に進めてきたデジタル(DX)とグリーン(GX)を軸にした経済改革を、国際比較の観点から分析した書籍です。博士は、戦後の成功モデルが制度的整合性を失ったことで日本が長期停滞に陥ったとしつつ、近年はDXとGXを中心に新しい経済モデルを再構築しつつあると評価します。
日本のDXは、ビッグテック主導でも国家統制でもなく、官民協調のミッション志向型が特徴です。デジタル庁やSociety5.0、スマートシティなどがその象徴です。GXでも、脱炭素技術や再エネを国家戦略として位置づけ、企業の取り組みと合わせることで、協調型の発展モデルが形成されています。
博士は、日本の制度変化を「伝統的製造業」「新自由主義」「協調型ミッション」の三つのスピリットの相互作用として捉え、これらが完全に整合しない“緊張状態“こそが変革を生むと述べます。これが本書のキーワードである「制御された不均衡」です。
また、ガバナンス改革やESG、人的資本経営など企業側の変化も重要な要素として扱われます。日本型雇用の強みを生かしつつ、リスキリングや労働移動を進めることで、デジタル・グリーン時代に適応できると博士は指摘します。
総じて本書は、日本がビッグテック依存でも国家統制でもない第三のモデルを模索しているという観点から、DXとGXを軸にした日本の再興を肯定的に描いています。(COPILOT作内容紹介)
海外から見た日本の研究にも色々あるのでしょうが、博士の研究では今後の日本の将来を肯定的に捉えています。隣の芝生は青く見えると言いますが、むしろ外側から見たほうが良く見えるのかもしれません。日本に住む一般人からすると“そんなに楽観できるような状況じゃないと思うんだけどなあ“と感じます。ただ博士の他の論文ではかなり耳の痛いことも書いているようで、官僚制は調整能力は高いが、変化に極端に弱いと指摘し、企業ガバナンスでは意思決定の曖昧さや責任の不明確さを批判し、日本の労働市場は世界で最も閉鎖的な部類と書いていて、日本の政治については方向性は出るが、実効が遅いと批判し、大企業とスタートアップの間に断絶がある。など数々の指摘をしているとのこと。できればもう少し突っ込んでもらって、バブル崩壊後の30年も続いている“なんだか面白くないふわっとした空気感(英語ではAnimal Spiritsというそうです)“についても研究してもらえないでしょうか。歪んだ構造を矯正するには?妙な空気感を変えるには?・・・・考えてみたいと思います。