アザミ

2026年02月23日 08:43

「アザミ」綾木朱美著を読みました。著者の東京大学大学院総合文化研究科修士課程修了。新聞社で校閲の仕事に携わりながら創作を開始、2025年、「アザミ」で第68回群像新人文学賞を受賞。(巻末の著者紹介より)

内容はこんな感じです
新聞社で校閲の仕事をする女性・アザミの内面を、一人称の地の文で静かに追っていく小説です。彼女の日常は淡々としており、他者との関係は浅く、世界との接点はほとんど「画面の向こう側」にあります。アザミは、SNSのタイムラインやニュースサイトのコメント欄、炎上事件の観察に時間を費やし、自分の感情よりも他人の感情の渦に巻き込まれて生きている。そんな彼女の心をとらえるのが、炎上の渦中にいるアイドル「ミカエル楓」。アザミは彼を“嫌う“ことで、自分の輪郭をかろうじて確かめようとする。物語は派手な事件を起こさず、アザミの内側のざらつき、不機嫌さ、自己否定、曖昧さへの苛立ちが、淡々とした語りの中に滲み続ける。SNSの悪意や他者の声に触れ続けることで、アザミの内面の影はさらに濃くなり、世界はますます刺々しく見えていく。しかし終盤、アザミは思わぬ怪我を負い、久しぶりに“身体の痛み“を強く感じる。その瞬間、彼女の語りのトーンはふっと変わり、長く続いていた不機嫌さが静かに薄れていく。それは救済ではなく、劇的な変化でもない。ただ、「いまここにいる自分」を身体を通して感じたことで、自己否定のループが一瞬だけ止まるような、そんな微細な変化である。『アザミ』は言葉の環境が人の存在のあり方を変えていくというテーマを、極めて静かで微細な筆致で描いた作品です。(COPILOTより)

綾木さんの修士論文のテーマは、張愛玲作品の「自己翻訳(セルフトランスレーション)」に関する比較研究らしく、言葉が変わると、語り手の姿もかわる」というテーマを扱っているそうです。言葉のプロ中のプロフェッショナルな方なのですが、「言葉の環境が人をどう変えるか」を考えている方の作品の中で、アザミが終始不機嫌で、不安定なトーンで描かれているのですが、終盤に怪我をするところからそのトーンがスーと静かに消えていくような変化を感じます。身体性が立ち上がったところから雰囲気が変わっていくような感じがするところは面白いなあと感じました。言葉が心を形作るのか?心が言葉を形作るのか?考えてみたいと思います。

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