「一片冰心」谷垣貞一著(聞き手:水内茂幸、豊田真由美)を読みました。著者の谷垣貞一氏は1945年生まれ。東京大学法学部卒。弁護士を経て、1983年、衆議院議員初当選。以来、12回連続当選。京都5区選出。1997年、国務大臣兼科学技術庁長官として初入閣。その後、財務相や国土交通相などを歴任。自民党内においても政調会長などの要職を務め、2009年9月、総裁に就任。3年にわたる自民党の野党時代を支えた。2012年12月には第二次安倍内閣で法相に就任、また2014年9月からは総裁経験者としては異例ながら幹事長を務めた。2017年9月政界を引退。(表紙裏著者紹介より)
この本は、2022年4月に産経新聞朝刊にて連載された「話の肖像画」全二十九回を加筆のうえ、再構成したもので、谷垣禎一氏が政治の荒波を越えて歩んだ人生を、誠実に振り返る回顧録である。
自民党が野党に転落した2009年、誰もが手を引く中で総裁に就任し、「火中の栗を拾う」覚悟で党の再建に尽力した。地方を巡る「ふるさと対話」で民意に耳を傾け、分裂の危機を乗り越えた日々は、信頼の再構築に捧げられた時間だった。
その歩みは、戦後の混乱期から始まり、弁護士としての経験を経て政界入りし、加藤の乱や総裁選辞退など、平成政治の転機を静かに見つめ続けた。政権復帰後は法務大臣、幹事長として安倍政権を支え、合意形成と議会政治の要としての役割を果たす。だが、2016年の自転車事故により政界を引退し、リハビリの日々へと移る。
その後も障害者支援やパラリンピックへの関心を深め、「自助、共助、公助」の理念を語り続ける姿には、政治家としての誠実さと人間としての成熟が滲む。
終章「誠は天の道なり、これを誠にするは人の道」では、後進に向けて、誠実さこそが政治の根幹であると静かに訴える。
この一冊は、権力の舞台裏ではなく、信と誠を軸にした政治の可能性を描いた記録であり、谷垣氏の「一片の氷のように澄んだ心」が読者の心に静かに届く。(COPILOTによる要約)
2010年、自民党は野党転落初の党大会で、党の基本姿勢を示す新たな綱領を発表した。「常に進歩を目指す保守政党」としての再出発を誓い、政策の基本的考えに「自助自立する個人を尊重し、その条件を整えるとともに、共助・公助する仕組みを充実」などと記した。
第五章 徳は孤ならずでは、谷垣氏が自転車事故後に社会復帰へ向けてリハビリを開始してから現在までが語られています。自助・共助・公助についてご自身が社会復帰に向けて努力される中で、とても率直に大切なことを語られていると感じました。「徳は孤ならず、必ず隣あり」という言葉は、「徳のある人は孤立せず、必ず理解者や協力者が現れる」ということだそうです。誠実であろうとする谷垣氏の人柄が現れているようです。政治は人間関係と一緒で誠実さが大切、信頼なくば成り立たない・・・政治家ばかりではなく誰にとっても重要なことであることは間違いない・・・よく考えてみたいと思います。