「嫉妬論 民主社会に渦巻く情念を解剖する」山本圭著を読みました。著者の山本圭博士は、立命館大学法学部法学科教授。名古屋大学大学院国際言語文化研究科単位取得退学、博士(学術)。岡山大学大学院教育学研究科専任講師などを経て現職。専攻は現代政治理論、民主主義論。著書に「不審者のデモクラシー」「アンタゴニズムス」「現代民主主義」、共編著に「〈つながり〉の現代思想」「政治において正しいということはどういうことか」、訳著に「左派ポピュリズムのために」などがある。
この本は、嫉妬という感情が単なる人間の弱さではなく、社会や政治の深層に絡みついていることを明らかにしてくれる思想的探究本であり、私たちは、なぜ嫉妬という感情を手放すことができないのか。嫉妬感情は、政治や社会生活、とりわけ民主主義とどうかかわっているのか。嫉妬にかんする古今東西の言説を分析しながら、この「厄介な感情」を掘り下げて考察しています。
あまり「〜論」という本はあまり読んだことはないのですが、面白かったです。ぜひ読んでみてくださいおすすめです。
嫉妬の故郷としての民主主義という項目で博士はこう語っています
嫉妬の完全に禁止された社会は、どんな差異も許さない息苦しい社会となる可能性が高い。平等と差異が交差する地点こそが嫉妬の故郷であるとすれば、民主社会はこの感情の存在を受け入れる必要がある。
平等と差異は、平等と競争と言い換えてもようと思うのですが、AIに言わせると平等が競争の質を決め、競争が平等の実効性を試すのだそうです。どのような競争を設計するのか?制度的な平等が進んでも、感情的・文化的な不均衡は残るのか?・・・交差する地点はどこのあるのか?・・・・考えてみたいと思います。
また嫉妬に耐性のある社会をという項目では、多元的な価値観を許容する社会のほうが、嫉妬に耐性のある社会になる可能性が高い。〈中略〉社会が価値あると見なす次元が多様であれば、安易な序列化が難しくなり、彼我の比較も容易ではなくなる。それが社会における嫉妬の爆発をいくぶんか抑制することになるのだ。
・・・・・・よく考えてみたいと思います。