「戦争犯罪と闘う 国際刑事裁判所は屈しない」赤根智子著を読みました。著者の赤根智子氏は東京大学法学部卒。1982年検事任官。横浜、津、名古屋、仙台、札幌他地検検事、東京高検検事、函館地検検事正などを経て国際連合アジア極東犯罪防止研修所所長、法務省法務総合研究所所長、最高検察庁検事などを歴任。名古屋大学・中京大学法科大学院教授、外務省参与・国際司法協力担当大使なども務めた。2018年国際刑事裁判所(ICC)判事。2024年3月からICC所長。
この本は、ロシアによるウクライナ戦争やイスラエルによるガザ攻撃など、重大な戦争犯罪に対してICCがどのように向き合ったかを中心に展開されます。著者は、プーチン大統領やネタニヤフ首相に逮捕状を発付したことで報復的な制裁や指名手配を受けながらも、「法の名の下に闘う」姿勢を貫きます。アメリカによるICC裁判官・検察官への経済制裁や政治的圧力が、裁判官・検察官の尊厳や独立性を脅かす現実を冷静に描写しつつ、制裁によってクレジットカードが使えなくなるなど、個人の生活にまで影響が及ぶ事例も紹介されており、国際法の理念がいかに脆弱であるかを訴えています。赤根氏の個人的な葛藤と使命感、そして国際司法の理想と現実の狭間で揺れるICCの姿を通じて、「力による支配」に抗う法の力を信じる物たちの物語です。
2023年3月ICCはプーチン大統領およびマリヤ・リボワベロア大統領全権代表(子どもの権利担当)に対する逮捕状に対する報復として、赤根氏は2023年7月ロシアから指名手配を受けました。(ちなみに無罪である人物に嫌疑をかけることを禁じた刑法に違反するが理由だそうです)
断固たる意志と、不屈の闘志をもつ赤根氏はこう語っています。『今、世界全体に、「法の支配」から「力の支配」へと逆行する大きな流れがあるのではないかと、私は危惧しています。このような時代だからこそ、「法の支配」を外交の柱に掲げる日本は、平和を守るために世界の先頭に立ってほしい。』
「法の支配」を貫くにも力は必要です、それは「力の支配」のような力ではなく、国際機関としての正当性や信頼、国際的な連帯や法の価値を信じる信念などによって支えられる“力“・・・・・COPILOTは法の支配を守る力を、制度と信念が重なり合う場所に生まれる風のようなものと表現していました(この頃COPILOTは詩的な表現が上手くなっています)・・・よく考えてみなければならないと思いました。