「私たちは何を捨てているのかー食品ロス、コロナ、気候変動」井出留美著を読みました。著者の井出留美博士は、食品ロス問題ジャーナリスト。株式会社office3.11代表。女子栄養大学大学院栄養研究科栄養学専攻博士後期課程修了、栄養学博士。東京大学大学院農学生命科学研究科農学国際専攻修士課程修了、農学修士。東日本大震災発生時の食料廃棄を見て、憤りを覚えたのをきっかけに、自らの誕生日でもあり東日本大震災発生日でもある3月11日を名前に冠した「株式会社office3 .11」を設立し、食品ロスの撲滅を訴える。著書に「SDGs時代の食べ方」、「いちばん大切な食べ物の話」(小泉武夫氏と共著)、「捨てないパン屋の挑戦」、「食糧危機」、「あるものでまかなう生活」、「賞味期限のウソ」、「捨てられる食べ物たち」など。(Wikipedia、表紙著者紹介より)
この本の内容は
「食品ロスのために失われている金額は、日本では年間4兆円とも言われている。たとえば大手コンビニ1店舗が捨てている食品は年間468万円。食品ロスは、コロナ禍やウクライナ侵攻、気候変動など、地球規模の事象と繋がっており、貧困や飢餓の問題にも影響を与えている。社会問題として複雑に絡まった因果関係を、多数の事例を挙げながら丁寧に解説する。牛乳、コメ、卵など身近な食べ物をめぐる問題から賞味期限と消費期限、ごみ問題まで、私たちの生活と直結する内容が満載。」
こんな感じです。(表紙裏内容紹介より)
IPCCの報告書「気候変動と土地」で、2010年〜2016年に排出された温室効果ガスのうち、8〜10%は食品ロスから排出されたものと推定されており、自動車から排出される10%にほぼ匹敵するという。2008年のOECDのデータによれば、世界の焼却炉の半分以上は日本にあるという(1016、環境省データ2024年より)。焼却処分の割合を示す「ごみ焼却率」は80%でOECD加盟国ワースト1位。また、日本の一般ごみ処理事業経費は2兆1519億円(2022年度)と膨大になる。日本は生ゴミを燃やすことで気候変動に加担してしまっている・・・・(だからと言って埋め立てればいいという問題ではないと思いますが)。食品ロスを考えることで、農業、流通や小売、気候変動やごみ問題、さらには経済格差問題や食料自給率の問題など色々な課題が複雑に絡み合っていることがわかります。食品ロス削減の全体像を描くにはそれぞれの垣根を取り払って柔軟な取り組みが必要な様です。関わっている省庁だけでも、農林水産省、環境省、経済産業省、厚生労働省、国土交通省、外務省、財務省、消費者庁などが関係しているように思います。
消費者庁によると、日本の2022年度の食品ロス量472万トンをもとに推計した経済損失は4兆円。先日話題にあがっていた基礎年金の引き上げの財源が年間2兆円でしたから、食品ロスを半減でき2兆円使うことができたならば解決できるくらいの数字です。食品ロス削減は、私たち一人ひとりが考えなければならない問題だと感じます。
最後に著者が本の中で紹介している「五観の偈」を紹介したいと思います。
「五観の偈」(ごかんのげ)とは、主に禅宗において食事の前に唱えられる偈文(げもん)で、食事に対する心構えを示したもの。唐代の南山律宗の僧・道宣が著した「四分律行事鈔」の観文を、宋代の黄庭堅が僧侶のために訳したものとされています。
1、この食事がどの様にしてここにあるのか、多くの人々の努力に感謝する。
2、自分の行いが、この食事をいただくに値するものかどうかを反省する。
3、貪欲や怒り、愚かさを戒め、心を正しく保つ。
4、食事は単なる欲望の充足ではなく、健康を維持するための良薬である。
5、食事をいただくことは、仏道を成すための修行の一環である。
この教えを日本に広めた鎌倉時代の禅僧・道元は鎌倉とも関係があり、五代執権北条時頼の招きで半年間鎌倉に滞在したのですが、権力との結びつきを避けるため、鎌倉に定住することはなかったそうです。
持続可能なシステムのカギは、人々の考え方の中にある様な気がします・・・。