外交とは何か 不戦不敗の要諦

2025年06月04日 16:35

「外交とは何か 不戦不敗の要諦」小原雅博著を読みました。著者の小原雅博博士は1980年東京大学文学部卒業後、外務省入省。在シドニー総領事、在上海総領事、東京大学大学院法学政治学研究科教授を経て、2021年より東京大学名誉教授、名城大学特任教授。その他の著書として「東アジア共同体」「国益と外交」「コロナの衝撃」「戦争と平和の国際政治」などがある。

この本の内容はこんな感じです
米中の覇権争い、あいつぐ戦争。試練の時代に日本外交はどこへ、どう向かうべきか。本書が探るのは戦争をせず平和的に問題を解決するための要諦である。現実主義、地政学と戦略論などの理論、E・H・カーやキッシンジャーらの分析に学ぶ。また陸奥宗光、小村寿太郎、幣原喜重郎、吉田茂、そして安倍晋三らの歩みから教訓を導く。元外交官の実践的な視点から、外交センスのある国に向けた指針を示す。(表紙裏の内容紹介より)

非常にわかりやすくて読みやすい本です。「調和」の時代(1853〜1912年)、「攻防」の時代(1912〜1931年)、「崩壊」の時代(1931〜1945年)の3つの時代に分けて近代・現代史を解説して、その外交を中心とした歴史を踏まえて課題や指針を示してくれます。参考文献も多く、「危機の二十年」E・H・カー著や「一外交官の見た明治維新」アーネスト・サトウ著は読みたい本リストに加えたいと思いました。ぜひ読んでみたください。

終章 試練の日本外交の章で博士はこんなことを言っています
「国際秩序が変容し、戦争が多発する危機の時代だからこそ、こうした国家・社会の強靭性が問われる。それを支えるのは、国民の政治的・外交的資質である。その根底には〈中略〉伊藤博文が述べた「国力の基礎」としての「人民の智慧」に通じるものがある。伊藤はこう述べている。《他国と競争して以って独立の地位を保ち国威を損せぬ様にしなければならないと云うには、人民の学力を進め人民の智慧を進めなければなりませぬ。其結果は一国の力の上において大いなる国力の発達を顕すと云うことは自然の結果でありませう》資源のない後発資本主義小国の日本にとって、重視すべきは「人民の智慧」に他ならない・・・・・」伊藤博文が演説で語ってから136年経っていますが、やはり国家・社会の強靭性とはソフトパワーがものをいう・・・・日本の基礎は変わらない・・・考えてみたいと思います。

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