「存在のすべてを」塩田武士著を読みました。著者の塩田武士さんは、関西大学社会学部卒業、大学1年の19歳の時に藤原伊織の「テロリストのパラソル」を読み、作家を志して創作活動を開始。新人賞に応募し続けるも12年間は芽が出なかったが、大学卒業後に入社した神戸新聞社での将棋担当記者としての取材経験を活かし、2010年、プロ棋士を目指す無職の男を新聞記者の視点で描いた「盤上のアルファ」で第5回小説現代長編新人賞を受賞。全選考委員が最初の投票でマルをつけ満場一致での受賞となった。2011年、同作で作家デビュー。第23回将棋ペンクラブ大賞(文芸部門)を受賞した。2012年に神戸新聞社を退職し、専業作家となる。2016年、グリコ森永事件を題材のモチーフとした「罪の声」で第7回山田風太郎賞受賞。同作は2016年版の「週刊文春ミステリーベスト10」で第1位、2017年版の「このミステリーがすごい!」で第7位、第38回吉川英治文学賞候補に選ばれた。2018年、「歪んだ波紋」で第40回吉川英治文学新人賞受賞。2024年、「存在のすべてを」で第9回渡辺淳一文学賞を受賞しています。(Wikipediaより)
内容はこんな感じです・・・
平成3(1991)年に神奈川県下で発生した「二児同時誘拐事件」から30年。当時警察担当だった大日新聞記者の門田は、令和3(2021)年の旧知の刑事の死をきっかけに、誘拐事件の被害男児の「今」を知る。彼は気鋭の画家・如月脩として脚光を浴びていたが、本事件最大の謎である「空白の三年」については固く口を閉ざしていた。異様な展開を辿った事件の真相を求め、地を這うような取材を重ねた結果、ある写実画家の存在に行き当たるがーー。「週刊朝日」最後の連載にして、「罪の声」に並び立つ新たなる代表作。(朝日新聞出版ホームページ内容紹介より)
本当にこんな出会いがあるのだろうか・・・というような不思議な出会いって現実にもあるような気がします。ここで描かれているのは不幸にして誘拐事件をきっかけにしての出会いなのですが、同じ才能を持っている者同士が出会い、互いを理解し繋がりを深めていく。また1枚の絵が描かれた場所を求めて旅する二人が偶然すれ違う。誘拐事件に関わった者たちが一つ一つ繋がっていく。いろいろな出会いが絡まって物語が語られていくのですが、誘拐事件がなければ出会うことのなかった才能ある画家の二人の人生は果たして幸せな人生だったのか?・・・・互いに持っている才能(ポテンシャル、もしくはエネルギーといってもいいと思いますが)を深い感覚(言葉を超えて感じることができる)で通じ合える人間に出会えることはそう滅多にあることではないし、もしかすると一生出会えないかもしれない・・・幸せだったかは別としてただ心が満たされるような特別な充実感はあったのだろう・・・そう思います。