禁忌の子

2025年03月12日 15:01

「禁忌の子」山口未桜著を読みました。著者の山口未桜さんは1987年兵庫県生まれ。神戸大学卒業。現在医師として働く傍ら、小説を執筆している。2024年「禁忌の子」で第三十四回鮎川哲也賞を受賞しデビュー。幼少期から読書が大好きで、小説やノンフィクション、漫画なども乱読し、高校生時代は文芸部に所属して創作に励み本気で作家になりたいと思っていた時期もあったが、結局医学部に進学し、その後執筆からは離れていた。しかし、コロナ禍と出産を期に「小説を書きたい」という気持ちが湧き上がり、「有栖川有栖 創作塾」に入塾して執筆を再開したそうです。当直ありのフルタイムで病棟に勤務しながら、子育てをし、さらに小説の創作をしているらしく、寝る時間あるのかなあ・・と思うくらい凡人には考えられないような生活ではないかと心配になります。

ネタバレにならないように表紙裏に書かれていた、内容の宣伝文書をそのまま内容紹介にさせてもらいます。
救急医・武田の元に搬送されてきた、一体の溺死体。身元不明の遺体「キュウキュウ十二」は、なんと武田と瓜二つであった。彼はなぜ死んだのか、そして自身との関係は何なのか、武田は旧友で医師の城崎と共に調査を始める。しかし鍵を握る人物に会おうとした矢先、相手が密室内で死体となって発見されてしまう。自らのルーツを辿った先にある、過去と現実が交錯する、思いもよらぬ真相とはー。(表紙裏内容宣伝文より)

2025年本屋大賞ノミネート作から選んで読んでみました。渡辺淳一さんの「ダブル・ハート」「プレパラートの翳」「二つの性」「無影燈」「白き手の報復」、帚木蓬生さんの「白い夏の墓標」「臓器農場」「閉鎖病棟」など、もともと医師が書いた医学物が好きでよく読んでいたため、今回の現役の医師が書いた本格医療ミステリーには興味がありました。最終章が『蜻蛉』となっているところが、もの悲しさやシビアな現実を表しているのではないかと思います。ぜひ読んでみてください。

ちなみに日本では本屋大賞なるものが存在するのですが、AIに他国でそれに相当する賞はあるかを聞いたところ、英国にはThe British Book Awardsという賞があって、作家、批評家、出版業界の専門家など、様々な分野から選ばれた審査員によって、小説、ノンフィクション、児童書などの各部門から最優秀賞作品が選ばれ、その中から1冊年間最優秀図書賞(Book of the Year)が選ばれます(残念ながら本屋の店員さんが勧めたくなるといったボトムアップ的な賞ではありませんでした)。2024年の授賞作を調べたところ「ミステリー・パズルMURDLE」という本が受賞していたので読んでみることにしたのですが、これを本と言って良いのか微妙なところであり(パズルゲームに近いかも)、ベストセラーになったかもしれないのですが、読書好きが勧めたくなる本とは言えないようです。ただ脳トレのゲームと思えばボケ防止になるかもしれません。100の推理を達成するまで諦めず頑張りたいと思います。

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