PERFECT DAYS

2025年01月15日 14:03

🎶There is a house in New Orleans
They call the Rising Sun
And It’s been the ruin of many a poor boy
And God, I know I’m one
      ・
      ・
      ・
And it’s been the ruin of many a poor boy
And God, I know I’m one
「The House of the Rising Sun」(The Animals version)1964年。「PERFECT DAYS」の挿入歌として象徴的に流れる曲です。ちなみに1962年にリリースされたアルバム「ボブ・ディラン」に収録されている「House of the Risin’ Sun」では女性が主人公になっており、映画の中で石川さゆりさんが歌っている「朝日のあたる家」の浅川マキさんの歌詞はボブディラン版に近い。

「PERFECT DAYS」ヴィム・ヴェンダース監督を観ました。ヴィム・ヴェンダース監督は、ドイツの映画監督、脚本家、プロデューサーであり、劇映画やドキュメンタリー映画の分野で活躍しており、特にロードムービーの第一人者として知られています。代表作には「さすらい」「アメリカの友人」「パリ、テキサス」「ベルリン・天使の詩」「ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ」などがあります。「パリ、テキサス」は1984年カンヌ国際映画祭でパルム・ドール賞を受賞。「ベルリン・天使の詩」は1987年カンヌ国際映画祭で監督賞を受賞しました。ヴェンダース監督本人のナレーションで小津の形跡を探し旅を記録した「東京画」では、小津の映像が持つ優しさと秩序について語っている。

「PERFECT DAYS」あらすじ
東京スカイツリーに近い古びたアパートに住む中年のトイレ清掃員・平山は、暗いうちに目を覚まし、毎日同じ手順で身支度をしてワゴン車に乗り込む。車内ではカセットテープを聴きながら、渋谷区内の公衆トイレを転々と巡り、隅々まで磨き上げていく。仕事が終わると、銭湯で身体を洗い、浅草の地下の大衆食堂で簡単な食事を済ませ、布団の中で文庫本を読む。眠りについた平山の夢では、その日に目にした光景が重なり合っている。その日々はきわめて規則正しく、同じことの繰り返しの中に身を置いているように見えた。ルーティンは孤独を遠ざけるものかもしれない。けれど男のそれはどこか違ってみえた。そんな彼の日々に思いがけない出来事が起きる。そしてそれは彼の今を小さくゆらした・・・・。

ヴェンダース監督作品では、40年近く前になりますが「ベルリン・天使の詩」1988年日本公開を大学生の時に友人と観に行った記憶があります(これ1本しか観ていませんが)。帰り道に友人と感想をいろいろ話したところ、欧米の生活に根ざしたキリスト教的な宗教観は日本人には解りづらいのではという結論に達したと思います。あれからだいぶ年月が経って、ヴェンダース監督が撮った日本で日本人を主人公とした作品を観ることができるのは何か感慨深いものがあります。ヴェンダース監督が公式ホームページのインタビューで語っているように、平山という男は禅宗の僧侶をイメージしているようで、日本人の生活に根ざした、日本人的な宗教観のようなものを描きたかったのかもしれません。小津作品はもとより黒澤作品(木漏れ日のシーンなどは「羅生門」のシーンを思い出させます)などの影響も感じます。日本人から見ても日本的だなあと思うのですが、仕事してちょっとだけお酒を飲んで、多くを語らず風呂に入って寝る。質素とかストイックとかではないんですよ・・誤解を恐れず言わせてもらうならば、アラ還独身おじさん(このブログを書く当人も当てはまるのですが)の1日なんてだいたいこんな感じではないでしょうか。平山の毎日はいつも通りに続いているようでどこか違って見えていた。同じことを繰り返し続けているからこそ違いに気づくこともある。「なんにも変わらないなんてそんな馬鹿な話、ないですよ」ほとんど喋らない(台詞がない)平山が心の声を絞り出すように吐く台詞です。小津作品のようにちょっとハッとさせられる台詞です。私の好きな映画ベストテンに入れたい映画・・・オススメです。

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