「怠惰なんて存在しない」(原題:Laziness Does Not Exist)デヴォン・プライス著を読みました。著者のデヴォン・プライス博士は、社会心理学者、作家。オハイオ州立大学で心理学と政治学の学士号を取得後、シカゴ・ロヨラ大学で応用社会心理学の修士号、博士号を取得。同大学クリニカルアシスタントプロフェッサーとして応用社会心理学とデータサイエンスの講義を行なっている。学術雑誌での論文発表と並行して一般メディアでも活躍。「Unmaskinking Autism:
Discovererring the New faces of Neurodiversity」、「Unlearning Shame:
How Rejecting Serf-Blame Culture Gives Us Real Power」などの著書がある。(表紙裏の著者紹介より)
ちなみに応用社会心理学(Applied Social Psychology)とは、社会心理学の知識や理論を実際の社会問題や現場に応用する分野です。具体的には、教育、職場、医療、コミュニティ開発など、さまざまな社会的な場面で人々の行動や思考を理解し、改善するための研究や実践を行うそうです。
この本は、怠惰という概念を再評価し、その裏に潜む真実を探る内容となっています。怠惰を単なる自己管理の欠如として捉えるのではなく、現代社会の構造や期待に対する反応として解説しています。著者は、私たちが「怠けている」と感じる時、それは多くの場合、過労やストレス、心理的なプレッシャーからきていると述べています。また、個人の効率や生産性を過度に重視する社会に対して、もう一度考え直すことを提唱しています。「怠惰」というラベルを疑い、私たちが感じる疲れや動機の欠如が、実際には必要な休息や自己ケアを示している可能性があると強調しています。
プライス博士は本の中で、自己理解と自己受容を促すツールを提供し、読者が自分のペースで充実した人生を送るための実践的なアドバイスを送り、自己批判を減らし、よりバランスの取れた生活を追求することの重要性を説いています。(COPILOTによる内容紹介)
この本の中で繰り返し「怠惰のウソ」という言葉が登場します。怠惰のウソ(The Lie of Laziness)とは、単純に行ってしまえば「生産性の高い人は生産性の低い人より価値がある」という考え方で、3原則があると博士は言っています。1、人の価値は生産性で測られる。2、自分の限界を疑え。3、もっとできることがあるはずだ。こうした考え方は私たちの中に深く染みついていて、半ば世の中の常識になっている。
先週ブログに書いた「CAN’T HURT ME」のデイビット・ゴギンズさんはこの考え方に沿っています。目標を設定しよう!もっとできることがあるはずだ!限界を疑え!まだ40%しか自分の能力を発揮していない!壁は乗り越えろ・ぶち壊せ!誰にでも挫折を味わうことがある、逃げずに正面から向き合って弱い部分を曝け出し、そこから力をもらうんだ!・・・長い人生ではどこかでこうした壁にぶち当たって、無理してでも勝負しなければならない時があると言う考え方は確かに理解できます。ですが・・・今週この本を選んだのも、先週とは真逆の考え方があるならば読んでおかなくてはと思い手に取りました。デヴォン・プライス博士はこうも書いています。「怠惰のウソ」は、人々に極端な二元思考を強いる。状況にかかわらずひたすら頑張るか、そうでなければ絶望的に怠惰かの二択を迫るのだ。問題に対して、個人主義と強い意志によって自力で解決できるか、あるいは解決できず挑戦自体が無意味であるかの二択になる。考えてみると「怠惰のウソ」は私が日本人だからかもしれませんが、西洋的だなあと感じます。プライス博士の考え方はどちらかというと東洋的な流れを感じます。日本も欧米化が進みどっぷり「怠惰のウソ」にハマっているようですが、世の中や個人が終わりなき生産性競争から抜け出すためには東洋的発想が必要なのかもしれません。考えてみたいと思います。