「よい対立 悪い対立 世界を二極化させないために(原題:High Conflict)」アマンダ・リプリー著を読みました。著者のアマンダ・リプリーさんは、ベストセラー作家であり、ジャーナリストです。The Atlantic誌やThe Washington Post紙などに人間の行動や変化について寄稿しているほか、Time誌在籍、同誌の2度にわたる全米雑誌賞(national magazine Awards)受賞に貢献。また、自身の仕事について語るため、ABC、NBC、FOXニュース、CNN、NPRにも出演している。著書にベストセラーとなった「世界教育戦争 THE SMARTEST KIDS IN THE WORLD」、「生きる判断 生き残れない行動 The Unthinkable:
Who Survives When Disaster Strikes -and Why」などの著書も執筆している。熟練した紛争調停者にして、可もなく不可もないサッカー選手、さらには母親、妻であり、ワシントンD.C.の住人。
内容はこんな感じです、対立には「健全な対立」と「不健全な対立(high Conflict)」がある。健全な対立は、私たちがよりよい人間となれるように背中を押してくれる。自らを守り、互いを理解し合い、向上していくために欠かせない。対して、「善と悪」「わたしたちと彼ら」といった、相反する関係が明確になったときに起こるのが、不健全な対立(High Conflict)だ。そして、不健全な対立は、とても興味深い現象ではあるが、理解はされていない。対立とはどのようなものなのだろうか?そして、不健全な対立を健全な対立に変える方法とは?この本では、対立が不健全な対立に発展するプロセスを分析し、その対立から抜け出す方法を提案することで、個人や組織が対立を効果的に管理し、解決するための貴重な鋭い視点を与えてくれます。
「善と悪の概念を超えたところにある場所。そこであなたと会おう」という言葉が本の冒頭に書かれています。対立することはなるべく避けたいし、みんな平和で仲良く暮らしていければそれに越したことはありません。しかし生きていれば個人や集団を問わず意見の食い違いから当然対立してしまうことはあります。例に漏れず自分自身もこの対立の罠に何度もハマったことがあります。これはどうしても譲れないといった深刻なものから、何気ない喧嘩や不注意な行動などの軽いものまで、振り返ってみると些細なきっかけがエスカレートして対立に陥ってしまうことはあるなあと思います。本の帯の推薦文に、ベストセラー著者のダニエル・H・ピンクさんが『非常に示唆に富んだ内容だ。(中略)同僚とのいさかいや家族の集まりで喧嘩をしたことのあるすべての人の必読書になるべき。』と書いていますが・・・私もそう思います。
自分の中ではちょっと衝撃的だったのですが、今まで物事の争点を明らかにして、なるべく単純化したほうが対立を解消するためにはよい方法のように考えていました(裁判所が判決を下すときみたいに・・・)。しかし著者の洞察ではその方法は危険をはらんでると言わざるを得ません。(もちろんケースバイケースなので一概には言えませんが)
「人は複雑さに少なからず影響される。これはとても大事なことだ。つまり、人は複雑さによって、世の中をさほど二項対立のない場所として見られるようになる。すると、好奇心がますます旺盛になり、新しい情報もすんなりと受け入れるようになる。要するに、耳を傾けることができるようになる。(中略)誰であれ、健全な対立を育みたい人が学ぶべき基本的なことはひとつ。早いうちから頻繁に、物語を複雑にすることだ。」(第7章より抜粋)・・・自らの反省も含め「こちら側とあちら側」「善と悪」といった考え方、意見や価値観の違いをどう乗り越えるか?・・・じっくりと考えて見たいと思います。