「知ってるつもり 無知の科学」(原題:THE KNOWLEDGE ILLUSION Why We Never Think Alone)スティーブン・スローマン&フィリップ・ファーンバック著を読みました。
スティーブン・スローマン博士は、認知科学者であり、ブラウン大学教授です。認知科学、言語学、心理学の分野で活躍しており、特に人間の認知と意思決定に関する研究で知られています。また、学術誌「Cognition」の編集長も勤めている。
フィリップ・ファーンバック博士は、認知科学者であり、コロラド大学リーズ・スクール・オブ・ビジネスの教授です。特に人間の意思決定や認知バイアスに焦点を当てた研究で知られています。
以上COPILTの著者紹介より
この本の内容はこんな感じです、自転車の仕組みを説明できると思い込む。政治に対して極端な意見を持つ人ほど中身を理解していない・・・・。人間がどれほど自分の知識を過大評価しているかを探り、私たちは自分が知っていると思っていることが、実際には他人の知識や社会的な情報に依存しており、個々の知識だけでなく他人との協力によって知識を形成し、利用していることを明らかにしています。さらに無知がどのようにして社会や個人の意思決定に影響を与えるかについても述べられています。この本では、私たちがどのようにして情報を処理し、意思決定を行うかについての理解を深めるために重要な洞察を提供してくれます。
知らないことを知る大切さとは何か?集団的知識と個の知識の関係など現代人の必読書と言えるような内容でした。最近読んだ本の中ではいちばんのおすすめです。ぜひ読んでみてください。
大変興味深いことが第9章:政治について考えるのなかに書かれていたので紹介したいと思います。(特定の政治的立場を推進する人々が、たいていの人が結果に基づいて判断する問題を、価値観の問題であるかのように見せようとすることの例として医療制度を挙げて)
国民の多くは、最高の医療をできるだけ多くの人にできるだけ手頃な価格で届けることしか望んでいない。社会として議論すべきは、それをいかにして実現するかだ。しかしそのような議論は専門的で退屈だ。このため政治家や利益団体は、これを神聖な価値観の問題にすり替えようとする。一方は、政府に私たちの医療についての意思決定を委ねるべきかと問いかけ、聴衆に小さな政府の重要性を思い起こさせる。もう一方は、国民にあまねく真っ当な医療を受けさせるべきではないかと問いかけ、寛大さや他の人々を守るべきだという価値観に訴える。だが、どちらの立場も重要な点を見逃している。医療をめぐる私たちの基本的価値観は大体同じようなものだ。誰もが健康でありたいと思い、他の人々の健康を願い、医者や医療従事者にきちんと対価を払いたいが、自らの負担が大きすぎるのは困ると考えている。医療に関する主要な争点は、基本的な価値観ではないはずだ。なぜならほとんどの人にとって重要なのは基本的価値観ではなく、最良の結果を達成する1番良い方法は何か、だからだ。
利害関係が絡んで専門的な議論を必要とする問題はかなり忍耐力が必要のようです。いろいろなことが絡み合って複雑で落とし所の難しい問題を議論しているうちに、誰かが神聖な価値観について言い出したら注意したほうが良いのかもしれません・・・・・・考えてみたいと思います。