「ある行旅死亡人の物語」共同通信大阪社会部 武田惇志・伊藤亜衣著を読みました。武田惇志さんは1990年生まれ、名古屋市出身。京都大学大学院人間・環境研究科修了。2015年、共同通信社に入社。横浜支局、徳島支局を経て2018年より大阪社会部勤務。伊藤亜衣さんは1990年生まれ、名古屋市出身。早稲田大学大学院政治学研究科修了。2016年、共同通信社に入社。青森支局を経て2018年より大阪社会部勤務。(著者紹介より)
この本の内容はこんな感じです。
2020年4月。兵庫県尼崎市のとあるアパートで、女性が孤独死ー
現金3400万円、星形マークのペンダント、数十枚の写真、珍しい姓を刻んだ印鑑・・・・・。記者二人が、残されたわずかな手がかりをもとに、警察も探偵も解明できなかった身元調査に乗り出す。舞台は尼崎から広島へ。たどり着いた地で記者たちが見つけた「チヅコさん」の真実とは?「行旅死亡人」が本当の名前と半生を取り戻すまでを描いた、47NEWS2022年2月20日、21日配信の記事をもとに大幅に加筆し、再構成したノンフィクションです。(本の帯より)
ちなみに行旅死亡人とは、病気や行き倒れ、自殺等で亡くなり、名前や住所など身元が判明せず、引き取り人不明の死者を表す法律用語。行旅病人及び行旅死亡人取扱法により、死亡場所を管轄する自治体が火葬。死亡人の身体的特徴や発見時の状況、所持品などを官報に公告し、引取り手を待つ。
この本はなかなか面白い作品で、今まで味わったことのない読後感のようなものを感じました。ある孤独死した女性の身元は判明して、確かにその女性の人生は事実として間違いなく存在しました。その人を知る人の記憶や、当人の足跡によって断片的な証拠が積み重なって身元は明らかになった。しかしそれではその女性がなぜそのような人生を送り、そのような運命を辿ることになったのかは何も語ってはくれません。よく墓場まで持っていくなどと言いますが、人生そのもの丸ごとその女性が墓場まで持っていってしまったかのようです。人生いろいろ、人それぞれに人生あり、疑問や興味は尽きませんが、人それぞれに事情というものがあるのでしょう、そっとしておくべきなのかもしれません。一人暮らしのおっさんには他人ごとではない物語でした。