「間違い学」松尾太加志著を読みました。著者の松尾太加志博士は九州大学大学院文学研究科博士後期課程単位取得後退学。心理学博士。早稲田電子専門学校福岡校講師を経て、佐賀女子短期大学講師、北九州大学(現・北九州市立大学)文学部教授、同大学学長などを歴任、現在は北九州市立大学特任教授。専門は人とコンピューターの関係。研究分野は心理学・実験心理学。(Wikipediaより)
この本では、手術患者の取り違えや投薬ミス、踏切事故など、さまざまなヒューマンエラーについて取り上げています。あらゆる「ミス=間違い」は、人が関わることで生じている。しかし生身の人間である以上、ヒューマンエラーを完全には防げないことを前提に、どのようにミスを減らし、重大な事故につながらないようにするかを探求し、世の中にDXが浸透する現状もふまえ、最新の知見をもとに分析しています。
松尾博士はこう書いています、『人間という生物は社会や技術の変化に比べると、ほとんど変化していない。人類の誕生が700年前と言われているが、人間の特性には大きな進化の変化があるわけではなかっただろう。狩猟採集の生活が長かった人間にとっては、現代のように、細かいミスをしてはいけないような作業は求められていなかった。それよりも自然環境の脅威の中でいかに柔軟に対応していくかのほうが、優先度は高かったはずである。』
要するに人間が柔軟に対応できることは(新しいことを創造したり、新しいものを作り出したりする素晴らしい能力にもつながるのですが)、いろいろなことを考えるわけなのですが、これが間違いを起こすもとにもなってしまう・・・・・なるほどなあと思いました。
この本の中では、認知システム工学の専門家であるエリック・ホルナゲル博士の従来の安全管理「Safety-Ⅰ」とシステムが柔軟に対応する能力を重視する「Safety-Ⅱ」という概念が紹介されていますが、この「Safety-Ⅱ」では人間に対して、エラーや事故を起こしても」責任の追及はせず、問題が生じそうな場面で柔軟に対応でき、うまく対処できる存在だと期待する考え方だそうです。人間の特性を考え、うまく対処することを考える・・・こう考えると確かに【安全】というものの捉え方が変わってくるように思えます。
ミスは避けたい、少しでも減らしたい、自分を含めて誰しもそう思っていると思います。しかしながら・・・(自分の反省も含めてですが)ミスは起こってしまう。博士はこうも言っています「残念ながらエラーは絶対になくならない。エラーを完全に防止することに焦点を当てていては、永遠に目標は達成できない。」・・・じっくり考えてみたいと思います。