紛争地の看護師

2024年05月22日 16:00

「紛争地の看護師」白川優子著を読みました。著者の白川優子さんは、国境なき医師団に所属する日本人看護師です。2010年から8年間、国境なき医師団(MSF)の看護師として17回の派遣を経験し、2018年から日本事務局で海外派遣スタッフの採用担当をされています。国境なき医師団(MEDECINS SANS FRONTIERES:略称MSF、本来はフランス語)は、1971年にフランスの医師とジャーナリストのグループによって作られた非政府組織(NGO)で、世界最大の国際的緊急医療団体です。国際援助分野における功績によって、1999年にノーベル平和賞を受賞しています。MSF憲章には「国境なき医師たちは、切迫した危機にある人たち、天災にせよ人災にせよ災害の犠牲者たち、交戦状態の犠牲者たちに対して、人種的、宗教的、理想的、政治的な、いかなる差別もせず、支援をもたらす」「ボランティアで参加する国境なき医師たちは、自らの使命にともなう危機や脅威を承知し、医師団が用意することができる以外の、いかなる見返りも求めない」など赤十字7原則と近いものとなっています。ちなみに日本で初めて国境なき医師団の登録医となったのは1993年、貫戸朋子医師です。

「紛争地の看護師」は国境なき医師団の手術室看護師である筆者の初の著書です。イラク、シリア、南スーダン、イエメン、パレスチナ・ガザ地区、アフガニスタンなど砲弾が飛び交うなかで、市民に寄り添い、淡々と、紛争地のありのままを描き綴った生と死のドキュメントです。紛争地の現場では一体何が起こっているのか、いつになったら戦争は終わるのか?市民たちはいつのなったら救われるのか?そうした現状からいつになっても脱却できない現実を考えるきっかけを与えてくれる一冊です。

無辜の市民たちが戦争の犠牲となっている現状を見て著者は「誰に言えば伝わる?」「どこに発信すれば届く?」と心から絞り出すように訴えます。残念ながら私を含めてこの本を読んだ読者全て、この質問の答えは持っていないのだろうと思います。なぜ戦争は無くならないのか?なぜ人は殺し合うのか?なぜこの疑問に答えは見つからないのか・・・考えてみたいと思います。

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