先日ブログに書きました「ビブリア古書堂の事件手帖Ⅳ〜扉子たちと継がれる道〜」で夏目漱石を取り上げていたので、「坊っちゃん」を再読してみました(最初は数えていたのですが、面倒になり、もう何度目かは分からなくなりました)。
「坊っちゃん」は1906年「ホトトギス」第九巻第七号の付録として発表。ビブリア古書堂でも登場しました1907年「鶉籠」(夏目漱石の初期作品集で「坊っちゃん」「二百十日」「草枕」などを収録)に収録されました。ちなみにこの「ホトトギス」は合資会社ホトトギスが発行する俳句雑誌であり、1897年正岡子規の友人である柳原極堂が刊行したものです。夏目漱石は「坊っちゃん以外にも「吾輩は猫である」「野分」などを掲載している。(夏目漱石だと朝日新聞連載のイメージがありますが、朝日新聞連載第1号は1907年「虞美人草」のようですーWikipedia調べ)
親譲りの無鉄砲で小供の頃から損ばかりしている。・・・中編小説で、テンポが良くて登場人物のキャラクターがはっきりして分かりやすく面白い。学生のいたずら、悪口雑言、暴力沙汰、痴情のもつれ、義理人情と色々なことが次々と起こり場面転換していく。他の漱石の作品とはやや違ったテイストで描かれているようですが、そこが多くの人に愛されるところでもあり数多くの映画、テレビドラマ、舞台、アニメとなっています。1953年映画「坊っちゃん」は坊っちゃん:池部良、マドンナ:岡田茉莉子、1966年映画「坊っちゃん」は坊っちゃん:坂本九、マドンナ加賀まりこ、1970年テレビドラマ「坊っちゃん」は坊っちゃん:竹脇無我、マドンナ:山本陽子、2016年テレビドラマ「坊っちゃん」は坊っちゃん:二宮和也、マドンナ:松下奈緒などWikipediaで調べた中では映画は5度、テレビドラマでは15度映像化されています。時代を超えて漱石の作品の中でも最も愛読されている作品の一つと言っていいと思います。
今回再読して気づいたことがあるのですが、「坊っちゃん」は古典落語に近いような気がします(誰かがどこかで書いていたものを読んだかもしれませんが)。主人公の坊っちゃんが語り手で(地文)、展開してゆくので、落語の登場人物を演じ分けるのとは違いますが、古典落語での定番の登場人物であるご隠居、八っつあん、熊さん、若旦那、お侍さん、おかみさんなど、こうしたざっくりとしたイメージのキャラクターが(かと言って分かりにくいわけではなく誰もが“こんな感じ?“といったクオリア的なものを持っている)、古典落語では、意地を張ったり、おっちょこちょいだったり、知ったかぶりをしたりでいろいろと巻き起こしていきます。「坊っちゃん」では、坊っちゃんはもちろんですが、赤シャツ、野だいこ、山嵐、うらなりなど、登場人物があだ名で登場し、固有名詞ではないざっくりとしたイメージのキャラクターが、無鉄砲だったり、陰湿だったり、おべっかを使ったりといろいろと巻き起こしていきます。古典落語もそうなのですが、同じ演目であれば、どのような人物が登場して、どのような物語が展開して、どのようなオチになるかは何度も聞いて知っているはずなんですが、何度聞いても飽きないですよね。「坊っちゃん」を何度読んでも飽きない秘訣はこの辺りにあるのかもしれない・・・・・・・・。
ちなみに夏目漱石は落語好きで寄せ通いを趣味としていたそうです。贔屓は3代目柳家小さんと初代三遊亭円遊だったそうです(チャットGPT調べ)