「ビブリア古書堂の事件手帖Ⅳ〜扉子たちと継がれる道」三上延著を読みました。著者の三上延さんは中古レコード店や古書店勤務を経て2002年「ダーク・バイオレッツ」でデビュー。2011年に発表した古書ミステリー「ビブリア古書堂の事件手帖」が2020年時点でシリーズ発行部数700万部を突破して人気作となっている。他の作品として「江ノ島西浦写真館」光文社文庫などがある。
ビブリア古書堂シリーズは以前にこのブログでも書いていると思うのですが、全11巻(第1シリーズアラビア数字表記で1〜7と第2シリーズローマ数字表記Ⅰ〜Ⅳに分かれる)全て読んでいます。この物語は、北鎌倉駅のホーム隣の路地向かいで営業している古書店“ビブリア古書堂“(実在のモデルはないようです)が舞台になっており、古書に関して並外れた知識を持つが、極度の人見知りである美貌の古書店店主・栞子が、客の持ち込む古書にまつわる謎を解いていく日常の謎系のビブリオミステリーです。(鎌倉在住で高校時代には北鎌倉駅を毎日利用していました)
第2シリーズになって主人公は栞子の娘・扉子に代替わりしているのですが、今回の物語は、祖母、母、高校生の扉子、それぞれの17歳時点でのエピソードが時代を超えて、親子3代に渡るミステリーになっています。特に今回は、夏目漱石の「鶉籠」「道草」「吾輩は猫である」の古書が取り上げられており、夏目漱石本人の初版本の蔵書が鎌倉文庫へ寄贈されていたのではないか?というミステリーも絡んでいてシリーズの中でも傑作の部類になるのではと思っています。ちなみに鎌倉文庫とは、戦争による出版事情の悪化で文学者も生活難に陥り、その解消と共に荒廃した人心を明るくする目的で、1945年5月、鎌倉市在住の文学者たちが自ら蔵書数千冊を集めて、鶴岡八幡宮の鳥居近くで開いた貸本屋です。発案者に久米正雄や川端康成、協力者に小林秀雄、高見順、里見弴、中山義秀などがおり、世話役の川端、久米、中山、高見、や夫人たちが交代で店に出て、活字に飢えていた世相を背景に多くの読者が集まり、空襲の日以外は連日開店となって経営は成功を収めたそうです。(Wikipedia調べ)
以前ブログで「戦地の図書館」という第2次大戦中に前線の兵士へ1億冊以上の本を送り、アメリカ軍では「兵隊文庫」と呼ばれていた話について書きましたが、日本でも第2次大戦末期、すでに東京では大規模な空襲が行われており敗戦が濃厚であった頃、本を読むことで荒んだ心に灯りを灯そうとしていた人がいて、いつ空襲があるかわからない、食糧難で生活することも苦しい中であっても人々は本を読むことを欲していた・・・・・。本を読むことによって得られるものの大きさについて考えさせられます。