成瀬は天下をとりに行く

2024年02月29日 13:28

「成瀬は天下を取りにいく」宮島未奈著を読みました。著者の宮島未奈さんは、滋賀県大津市在住の小説家です。2018年、「二位の君」で第196回コバルト短編小説新人賞受賞(宮島ムー名義)。2021年、「ありがとう西武大津店」で第20回女による女のためのRー18文学賞の大賞、読者賞、友近賞をトリプル受賞。2023年、同作を含む初の単行本「成瀬は天下を取りにいく」(デビュー作)が刊行され、2024年に第39回坪田譲治文学賞を受賞しています。今回読みました「成瀬は天下を取りにいく」はデビュー作ながら14万部を突破し、続編「成瀬は信じた道をいく」が2024年1月に刊行されています。

この小説は、独自な視点を持つちょっと変わった主人公・成瀬あかりの中学2年生から高校3年生までの間の、周囲を巻き込みながら我が道をいく出来事を描いた連作短編集で、著者の住んでいる滋賀県大津市を舞台にしています。主人公・成瀬あかりは幼稚園の頃から他と一線を画し、走るのは誰よりも速く、絵を描くのも歌を歌うのも上手で、ひらがなもカタカナも正確に書ける子で、小学校の卒業文集に書いた将来の夢は「二百歳まで生きる」であり、中学生になると期末試験では五百点満点をとると宣言し(結果は四百九十点)、「島崎、わたしはこの夏を西武に捧げようと思う」と言い放つ・・・、ちょっと変わっているどころではない今まで見たことないタイプの暴走女子中学生か・・・・はたまたこの若さで人生の楽しみ方を悟ったスーパー中学生か。読んでいても成瀬の暴走にだんだん引き込まれていってしまう、没入感あふれる面白い作品なのでぜひ読んでみてくださいおすすめです。

まさしく中学2年生の時にわたしには成瀬のような友人がいました。その友人Nは頭脳明晰で、成瀬と同じく色々な分野で才能を発揮している男でした(時代の違いでしょうか、成瀬のように孤立することはなく友人も多くてみんなに一目置かれていました)。以前ブログに書いたと思うのですが、熱海の花火を見に行こうと誘われてわたしの他にもう一人巻き込み、鎌倉から自転車で熱海に一泊旅行に行き(途中、箱根の峠を越える時に自転車がパンクして大変でした)、また鎌倉からひたすら歩いていけば日没までどのあたりまで歩けるだろうと思ったらしく(東海道の宿場町がこの辺りでは、戸塚宿、藤沢宿、平塚宿、大磯宿、小田原宿とかなり間隔が短いのを疑問に思ったようで)、“ここからなら小田原あたりまで行けるんじゃね?“と言い出しわたしの他にも2人巻き込んで決行したものの国府津で断念したことがあります(実を言うと言い出しっぺの本人は当日欠席したというオチまであります)。なのでわたしはどちらかというとこの小説に登場する成瀬あかり史を見届ける凡人・島崎みゆきの気持ちがなんとなくわかるような気がします。きっかけはただ巻き込まれただけの感じでしたが、でもやっぱり楽しかったなあ・・・・変人気質でどちらかと言うと孤立しがちだったから誘ってくれたのかなあ・・・・今になっても思い出すと楽しかった思い出です。実を言うとわたしが本を読むのが好きになったのはこの友人Nの影響なんです。確かものすごく読書家だった友人Nにどんな本読んでる?と聞いたところがきっかけだったと思います。その後友人Nは神奈川県下でも有数の超がつく進学校に進学し(わたしは入れるわけもなく別々になったのですが)、東京の超がつく有名私立大学に進学して、誰もが知っている超有名総合商社へ就職していきました。人との出会いって不思議なものですね・・・Nは今、何してるだろうか?30年以上会っていないのでわかりませんが、どこかの国の現地法人で活躍しているのではないかと思います。



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