「体はゆく」伊藤亜沙著という本を読みました。著者の伊藤亜沙博士は美学者、文学博士。東京工業大学科学技術創生研究院未来の人類研究センター長。同リベラルアーツ研究教育院教授。専門は美学、現代アート。幼い頃は虫や花が好きで、大学2年までは生物学者を目指していたが、文系に転校して美学を専攻されたそうです。主な著作に「どもる体」「手の倫理」「記憶する体」など。(Wikipediaより)
この本は、伊藤亜沙博士がテクノロジーと身体の関係について考える内容です。博士は先端的な研究を紹介しながら、人間の「できる」とは何かを問いかけます。ピアノや野球の技能習得、リハビリ、脳波でしっぽを動かすなど、5つのテーマを取り上げています。それぞれのテーマに関わる5人の科学者やエンジニアと対話しながら、体の可能性を追求しており、体は私たちが思うよりずっと奔放で、そのユルさこそが体への介入可能性を作り出していると語っています。
それぞれの5人のスペシャリストは
第1章 古谷晋一博士 ピアニスト・音楽演奏科学者。ソニーコンピューターサイエンス研究所シニアリサーチャー・シニアプログラムマネージャー、ハノーファー音楽演劇大学音楽生理学・音楽家医学研究所客員教授、上智大学特任准教授。
第2章 柏野牧夫博士 NTTコミュニケーション科学基礎研究所柏野多様脳特別研究室長・NTTフェロー。東京大学大学院教育学研究科身体教育コース客員教授。
第3章 小池英樹博士 東京工業大学情報理工学院教授。
第4章 牛場潤一博士 慶應義塾大学理工学部生命情報学科教授。
第5章 暦本純一博士 東京大学大学院情報学環教授、ソニーコンピューターサイエンス研究所フェロー・副所長、ソニーCSL京都ディレクター。
上記5人のスペシャリストに伊藤博士が「出来なかったことができる」とはなんだろう?という視点から身体の「ユルさ」における可能性について迫っています。それぞれ章ごとに研究分野や研究内容が異なっているため統一感に欠ける印象はありますが、それぞれの分野ごとに完結した話として読めばとても興味深い研究ばかりです。テクノロジーの活用される分野(活躍する)はまだまだ沢山あるなあと感じます。脳科学好きにもおすすめですぜひ読んでみてください。
中でも牛場博士が行ったBMI(ブレイン・マシン・インターフェイス)の実験でHMD(ヘッドマウントディスプレー)をつけた被験者にターゲットを指さしてもらう実験は興味深かった。詳しくは本を読んでもらいたいのですが、HMDで本来より1度ズレた映像を見せ、それを40回繰り返すというものなのですが、合計で40度ズレた映像をみていることになるのですが、当然違和感を感じ変化に気づくと思うのですが、少しづつ変化した場合に脳は無意識下で捉えた誤差を自動的に処理し、次の運動出力に反映させるというオートマチックにアップデートする機能が備わっている。つまり40度もズレていても変化に気づかないそうです。意識できる領域は氷山の一角でその下には無意識の広大な領域が広がっていて、膨大な情報処理がそこで行われている・・・・。意識とは能動的なのか?受動的なのか?それともそんな言葉とは関係ないところにあるのか?考えてみたいと思います。